カリフォルニアを拠点に活動するソングライター/ギタリスト・ブレイク・ミルズ。プロデューサーとしても有名ミュージシャンの作品を次々と手掛ける今最も旬な存在として知られる。音楽活動の原点は、高校時代にテイラー・ゴールドスミスらと結成したサイモン・ドーズ。2005年にデビューし2007年に解散しテイラーらは新たにドーズを結成するが、ブレイクは袂を分かちツアー・ギタリスト/ソロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートした。
ソロでは2010年に『Break Mirrors』をリリース。フォーク、ロック、ジャズ、ブルースなどをブレンドした音楽性と、独自の奥行きのあるサウンドメイキングが各方面で絶賛される。同時にプロデューサーとしてもフィオナ・アップル、ジョン・レジェンドなど次々大物アーティストの作品を手掛けることとなり、グラミー賞で3部門を受賞したアラバマ・シェイクスの『サウンド&カラー』(2015年)はプロデュース・ワークの出世作となる。
ギタリストとしてはソロ・キャリアの比較的初期の2013年にエリック・クラプトンが主催する「クロスロード・ギター・フェスティバル 2013」に招集されるなど、その繊細なプレイは多くのミュージシャンから称賛されてきた。
初のメジャー作『Heigh Ho』(2014)やアンビエントに接近した『Look』(2018)といったギターアルバムから、ソングライター的なカラーを打ち出した『Mutable Set』(2020)と異なる作風を打ち出す一方で、ライヴ活動ではサム・ゲンデルらと即興的な演奏を展開するなど一つの枠に収まらない活動を続けている。
2023年ブレイク・ミルズはソロアーティストとして新たなアプローチの『ジェリー・ロード』を発表した。多作で知られる鬼才、クリス・ワイズマンとのコラボレーションにより生まれた本作は、アンビエント・アメリカーナ的なサウンドスケープを提示しつつ、より自由度の高い演奏を体現している。
演奏家と同軸でのプロデュース業も絶好調だ。アマゾン・プライムの同名のドラマ内に登場する架空の70’sバンド、ディジー・ジョーンズ&シックスやジャック・ジョンソン、マーカス・マムフォードのソロ作など話題にこと欠かない。
日本では昨年の「FESTIVAL de FRUE 2022」及びジャパン・ツアーでのピノ・パラディーノ&ブレイク・ミルズfeaturing サム・ゲンデル & エイブ・ラウンズとしての来日でのプレイが鮮烈な記憶として残っている。プロデューサーとしても関わったピノ・パラディーノとのアルバム『Notes With Attachments』をさらに一歩前進させたカルテットが、日を重ねるごとに熱を帯び進化する様は圧巻だった。
今回は、クラシック/ポピュラー幅広く活動するピアニスㇳ/作曲家、ドーリー・バヴァルスキーとのデュオ編成での来日。最小編成でよりギタリスト/アーティストとしてのブレイク・ミルズの世界を知る機会になるだろう。
text by Hideki Hayasaka